深く潜るために
Going Deeper
ルールはあそびかたに書きました。ここに書くのは判断の話だけです。何を焚き、何を食い、何を賭けるか。答えは書きません。深淵に答えはないので、考え方だけ置いていきます。
1 松明の経済
このゲームの寿命は、HP ではなく松明です。灯りが尽きても即座には死にません。ただ、そこから暗闇、正気、発狂、HP と続く長い坂が始まります。松明の残り本数は、あなたがあと何階ぶん人間でいられるかの目安だと思ってください。
- 焚くのは基本、有利ライン60を割ってから。まだ明るいうちに焚けば、灯りは上限からこぼれて闇に捨てるだけです
- ただし、割ってから慌てるのは遅い。この先に戦いの匂いがするなら、ラインを割る前でも灯りを整えてから踏み込む価値があります
- 松明は灯りと調理の二重の財布です。焼いて食えばそのぶん灯りに回せる本数が減る。「この1本は照らすのか、焼くのか」を毎回問われています
- 深く潜るほど、同じ1本が短く燃えます。浅いうちの節約は、そのまま深層での猶予になります
松明はラン中に補充されません。例外は血の対価だけ。無料のアタリは、この穴にはありません。
2 食う判断
勝つたびに四択が来ます。生か、焼きか、袋か、見送るか。どれが正解かではなく、いま何を守りたいかで選びます。
- 生のまま食う:正気を賭けて、技と実りを取りにいく選択。技の面影は生で食べたほうが宿りやすい。正気に余白があるうちの生食は投資です
- 焼いて食う:松明1本で正気を守る。灯りも戻るので、暗くなってきた場面ほど筋がいい
- 袋に入れる(2枠):腹が減っていないときの答え。肉を捨てずに持ち歩き、空腹が来てから生か焼きかを選び直せます。判断の先送りができる、数少ない贅沢です
- 見送る:正気も松明も守る代わりに、腹は満ちない。浅いうちはこれが一番強いことも珍しくありません
満腹でも食えます。食事は腹を満たすためだけの行為ではなく、この穴で唯一の成長手段だからです。
3 正気の崖
正気はすり減るほど、深淵の宝がよく見えるようになります。つまりこのゲームは、崖っぷちで遊んだ者に多く払う設計です。問題は、いつ崖に寄って、いつ引き返すかだけ。
- 賭けるなら、戻す弁を握っているうちに。焼いて食う余力、明るさを保って歩ける松明。それらが残っているうちの低正気は賭けですが、尽きてからの低正気はただの転落です
- 崖の位置は読めます。落ちるのは正気が尽きたその瞬間だけ。ぎりぎりまで寄る勇気と、一歩手前で止まる冷静さは両立します
- 発狂ゾーンは即死ではありません。遅い死です。自分を傷つけ、幻に斬りかかり、やがて表示の数字すら信用できなくなる。稀に正気が戻ることもありますが、それを計画に入れるのはやめておきましょう
深淵に近づいた者ほど、向こう側のものが見える。それは報酬であり、警告です。
4 戦いの間合い
戦闘の判断は、敵が大技をためた瞬間に集約されます。見えたタメへの応手は三つ。退いて仕切り直すか、怯ませて出鼻を挫くか、倒し切れる算段があるなら押し切るか。
- 退くコストは去り際の一発です。HP に余裕があるうちなら安い保険、瀕死で払えばそれ自体が賭け。「まだ退ける HP」を残して戦うのが間合いの基本です
- 明るさが足りないと、敵の攻撃を躱せません。見えないものは躱せない。だから灯りは戦いが始まる前に整えておく。戦闘中でも松明はターンを使わず焚けますが、暗がりで殴り合いを始めた時点で一手遅れています
- 敵の下の細いバーは退き際の物差しです。削り切れそうにないと読めたら、粘らずに背を向ける。この穴では、勝ち逃げより生き逃げのほうが偉い
技スロットは4つ。何を残し、何を上書きするかも間合いのうちです。退く手段を捨てたなら、退けない戦い方を最後まで通すことになります。
5 血の取引
フードの男の店に値札はありません。あるのは、いくら血を抜かれるかだけ。この世界に清潔な回復はないので、払った HP はゆっくりとしか戻りません。
- HP の余裕は財布です。腹が満ちていて、まだ浅く、回復の見込みがあるうちの出費は安い。深層で瀕死の身から抜く血は、同じ量でも値打ちが違います
- 買い物のしすぎでも死ねます。店先で「これを買った直後に一戦できるか」を自分に聞いてから払うこと
- 稀に松明が並びます。灯りの残りと相談して、血で寿命を買い足すかどうか。重い対価ですが、松明が尽きかけた身には一考の余地があります
6 深さごとの心構え
この穴は5階ごとに層が変わり、一段ずつ重くなります。同じ判断でも、深さで意味が変わる。
- 浅いうちは、貯める。正気は温存できるし、灯りもまだ安い。ここで使わなかった資源が、あなたの最深到達を決めます
- 中ほどからは、松明がそのまま寿命になります。浅層での焚きすぎ、あるいはケチりすぎの請求書が、このあたりで届きます
- 深くまで来たら、もう堅実さだけでは降りられません。正気を賭け、石に触れ、血を払う。賭けの連続です。ただし、どの賭けも「負けたらどう死ぬか」まで見えてから振ること
最初の数回は、あっけなく死にます。それで正常です。この穴は、死んだ深さの分だけあなたに手口を教えます。